2010年12月8日水曜日

加藤先生のケアプラン演習ふりかえり  仙台センター投稿より

投稿者:大熊正喜 投稿日時:2007-05-23 13:38:19

■ 加藤先生の演習の進め方は下記の通り ==============
◆加藤さん(78歳・女性)の夕方の事例提示   どう対応するか? プランを各自考えて、代表が発表アセスメントとケアプランについての解説   主観的QOLの向上・内的世界を理解した対応   BPSDの概念 行動障害という概念との違い
◆Bさんの朝・・・・スタッフ 物語・本人の内的世界の物語 講師が読むBさんの今の気持ちを想像してみよう。 各自考えてノートに書く。 発表。最初のプランをBさん本人は何点と評価してくれるか? ここで、グルーピング  GH/特養/その他在宅の3グループ
◆演習1 BS法  もし自分が痴呆になったら、こんなケアだけはしてほしくない。
◆演習2 BS法  もし自分が痴呆になったら、こんなケアをしてほしい。
◆演習3 認知症ケア理念の構築         「私たちは認知症高齢者に対して・・・・・のケアを提供いたします。」 この理念の枠組みを午後のケアプランの評価に使用する。 (このテーマの演習は、11/23の介護研修総論で、 内藤先生の演習でも行った。このとき、ていねいにBS法やセブンクロス法について教えてもらって、BS法のマ ニュアル文書もいただいた。)        

------------------------ ここで昼休憩   3時間経過

◆演習4 加藤さん(78歳・女性)の夕方の事例で、ケアプランを作成するとき、足りない情報は何ですか? グループワークで、A3の白紙を三分割し、用紙の左端に書き出す。その情報が必要である理由は何ですか? 用紙の中央に書き出すその情報はどのようなプランに結びつきますか? 用紙の右端に書き出す情報収集の評価   ○  △  ×  をつける。 本当に必要だった情報は   ○=必要な情報+その根拠+導き出されるケアプランの三つが揃ったもの できればあったほうがいい情報   △=必要な情報+その根拠 あるが、ケアプランなし あまり必要のなかった情報   ×=必要な情報と思ったが根拠なし
◆演習5 加藤さんのケースでほんとうに必要だった情報を自分たちで創作し、事例を作成してください。
◆演習6 自分たちで創作した加藤さんの事例をもとに、ケアプランを作成してください。条件として、 ○ 演習3の自分たちの理念にそったケアプランでQOLに配慮したもの ○ 具体的で実行可能なもの ○ 24時間ケアを念頭に置いたものここで問題です。自分が加藤さんだとして、このケアプランに満足ですか? 100点満点で評価してください。

■ 考察 ========================================
少ない情報で事例を提示して事例検討を始めるのは、オーストラリアで学んだ方式とのこと。

インシデント・プロセス法??? 

 仙台で初めて知った。 少ない情報からこのようなニーズ(課題)があるのではないかという仮説を立て、それを検証するための 情報をさらに収集し、評価・考察するというのは、現場で一般的に行われている方法。事例検討も、 そのような現場で実際に行われるプロセスを仮想体験するならば、事例もインシデント・プロセス法のように 提示することから、演習を始めたほうがより、現場に近い体験ができると考える。詳しすぎる一般事例法の 提示は、現場的な情報収集のプロセスを省いてしまっていて、実践的ではない。
 ただ、ここで問題は、観察された一時点での事実から、どのような推論をしていくか、 そのベースとなる基礎知識が問題。 「夕方になると落ち着きがなくなり外に出ようとする女性」なぜか???? ここで、徘徊という「行動自体に着目した」「行き当たりばったりのその場限りの対応」⇒     一緒について歩く   ではなく、本人の内的世界=主観的現実を理解した対応、 その内的世界で本人が納得できるような関わりが必要であると、加藤先生は説く。 そのとおりだとしても、内的世界の理解のためには、少し「基礎知識」が必要ではないか。 徘徊についてもアセスメントのための基礎知識が必要。私の勉強した範囲では、 徘徊にも以下のようなアセスメント=原因別のタイプ類型化が必要。  大熊の模擬講義を準備する中での、小沢勲、竹内孝仁、三好春樹からの学びだ。
★徘徊ではない徘徊  ( 迷子)  ⇒ 竹内の知的衰退型
★反応性の徘徊    ⇒ 三好の不安困惑型or竹内の環境不適応型
★せん妄による徘徊  
★脳因性の徘徊       ⇒ 竹内の葛藤型
★「帰る」「行く」に基づく徘徊 ⇒ 竹内の回帰型
★夕方症候群   ⇒ 回帰型+脱水による身体不調型 一緒について歩きながら、アセスメントしていく

 ・・・つまり、内的世界を共感的に想像し理解し、 徘徊の原因を探っていくことが大切。加藤さんはなぜ、何のために、どこへ向かって「出て行こう」 としているのか??? たとえば、子供が家出お腹を空かせて待っているから、早く帰ってご飯を炊いてやらなければ・・・ という言葉がご本人の口から出てくれば、加藤さんは、一生懸命子育てしていた時代に回帰しているという 仮説が出てくる。 その場合、回帰しているだろうBさんの「その時代」についての、もう少し詳しい情報収集が必要となる 。例えば、その時代のBさんの姿を象徴するような一枚の写真があれば「Bさんらしさ」が私たちにも共有 できるかも・・・・。これは子供の世代ではなく、Bさんのきょうだいや地域の知人など同世代の生き証人 からの情報収集になる。


 回帰型に、脱水による身体不調型が加わって「症状」が強化されている可能性もあるので、 昼間の水分摂取の状況もアセスメントしなければならない。1日1300CCの最低水分摂取量を切っている お年寄りは多い。ノロウィルスなどで嘔吐下痢をするととたんに脱水から血栓性の疾患を引き起こす リスクが高まるのが高齢者だ。昼間デイサービスで活動的に過ごしただけでも、夕方脱水傾向になりやすい。
 あるいは別の視点では、施設に入って間もないため、いま・ここにいるということに馴染んでいない。 漠然とした居心地の悪さがあり、一方で、自分の居場所について頭の中の地図ができていないため、 どこかわからないが、「自分の居場所」を探して、出口に向かっているのか? 環境不適応+不安困惑型の徘徊。 その場合、私たちが前期研修でせんだんの里の広大な建物の内外を徘徊したように、 施設の内外をしっかり徘徊しながら、自分の居場所についての「頭の中の地図」を作っていくとともに、 施設の中に、Bさんの馴染んだ「物」、Bさんが大切にしている人生の詰まったような物をしっかり持ち込んで 個性的な空間作りができているかどうか。また、Bさんと職員や他の利用者との関係で、どこを手がかりに 「なじみの関係」を築いていけるかとか、それも、日常に埋め込まれたアクティビティを通してBさんらしさ が発揮できる場面、役割はないかなど・・・・そういう方向へ、アセスメントが拡がっていく。

「内的世界」を共感的に観察するにしても、きっかけとなる基礎知識を道しるべとしてに、 その人の固有性を探っていかなければ、アセスメントの深まりが得られない。 また、こうした、徘徊のアセスメントの基礎知識に基づいて、ケアへの方向付けが明らかになってくる。 回帰型タイプと環境不適応型タイプとでは、関わり方は少し違ってくる。そこまで、現場のアセスメント ⇒ケアプランの質をレベルアップしていく必要がある。 このあたりに、「内的世界を理解した対応」の中味の部分が展開されるのではないかと考えるし、現場では、 ここまで掘り下げなければ、ケアプランにはならない。 このとき、「回帰型」ではないだろうかとか、「本人の人生が詰まった物がないか」とか、そういう時点で、 おもむろにセンター方式のアセスメントチャートを選択的にひっぱり出してくるのも有効だろう。

  センター方式の弱点は、認知症のアセスメントの基礎理論とリンクしないまま、どういう場面でどう活用す べき情報かもわからずに、とにかく情報を網羅的に集めるという陥穽に陥りやすいことではなかろうか。 「選択式」で選択する主体の目的意識の問題じゃないですか?日野さん。 大熊としては、公約どおり、たとえば加藤さんの夕方の事例から、ケアプランに展開する演習のプログラム を作って、益岡さんのご協力も得て、「上演」しようと思う。いつになるかわからないが・・・


  ========= なお、模擬演習で、其田・白井・舟越チームが引用した、加藤先生のスライドが見つかりました。 お騒がせいたしました。ケアプラン演習の本体レジメではなく、12/2の最後の部分のセンター方式の概要説明 の中に出てきた。舟越さんからもフォーラムにご連絡をいただいた。 その箇所の関連スライドで、認知症ケアの変遷については大賛成! 認知症への各種療法の効果が、 ○○療法の適応によって効果が上がったというが、 それまでほおって置かれた利用者に○○療法をきっかけに、職員が積極的に関わったことによる効果が大きい という加藤先生の見解はそのとおりだと思う。 「療法」はやめて、ICF的に言えば、活動と参加。大熊的に言え ば、日常に埋め込まれたアクティビティを媒介としてなじみの関係の形成を支援する・・・という方向性がま っとうではないだろうか。

 加藤先生のケアプラン演習で、もう一点良かったところは、午前中の理念や基本方針の構築と、午後のケアプラン演習をリンクさせている点だ。
  これは、昨日2/16岡山で聴講した、藤井+中塚コンビ( 仙台センター修了の岡山指導者グループの 若手ホープでしょう!! )の基礎課程3日目の演習でも踏襲されていた。加藤先生からの学びでしょうか。
  午前中に作成した、模造紙にポストイットを貼り付けて整理した 「認知症介護の基本方針」のポスターと、午後、同じグループで作成した事例に対するケアプランのポスター を、並べて提示、発表するスタイルは、今後もこのカリキュラムの中で引き継ぐべき「伝統」だと思う。
しかし、2/15の二日目のきのこの中野+宮本コンビの講義演習との連携はいまひとつかな。二日間つづく、 同一グループでの演習をストーリー性を持って行っていくための工夫が必要と思われた。

 それから、他人の人生に「土足で踏み込むこと」への警鐘は、加藤先生からの学びの中で新鮮だった。   目的を持った情報収集。  なぜその情報が今必要なのか、問題解決のために仮説を立てて、  検証に必要な情報を、その人にとっての必要なケアの目的に限定して収集するという態度を 改めて確認したい。   ただ、私たちはあまりにもその人の今の目の前の行動に振り回されて、周囲にとっての「問題行動」 を如何に押さえ込むかという思いつき的ケアプランのレベルに留まっていて、その人の人生に思いをはせる ゆとりも想いもないという現場の貧困さのほうが問題だと思うが・・・・。    (この項  了 )

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